レポート

FORMULA DRIFT

Round1 ロードアトランタ、ジョージア

2021年6月11日

Round.1  2021 年 5 月 7 日

1年ぶりの開催となった、 Road atlanta 。最後に走ったのは 2019 年、そしてマシンは S15 シルビアであった。今回は新車両のデビュー戦となるものの、開幕戦までの運びは決して順調ではなかった。

レース1 週間前にジョージア州に入り、チームと共にシェイクダウンに臨んだ。しかし、そこでマシンは重いトラブルを抱え、走行することができたのは数十分。決して十分なテストではなくて、車両を理解する以前に部品の調達ならびに修復がレースに間に合うか、どうか、の瀬戸際というスタートを切った。マシントラブル確認後、チームはガレージに戻り、総出で修復作業。チームの本拠地はジョージア州である為、場所やツール、人手には困らなかったが、もし開幕戦がジョージア州でなかったら、、、と考えるだけで恐ろしい状況であった。
トラブルが再発しないようチームは予選前練習走行ぎりぎりまで総出で作業を行い、練習走行直前になんとか、マシンをサーキットに運ぶことができた。レース本番前に、新車に乗れていないということはドライバーである私にとって、非常にストレスとプレッシャーを与えることであったが、トラブル発生前に数十分の間、マシンを転がした感覚はとても良く、テスト無しでも乗れるのであろうという自信も逆にあった。というのも Jerry( チームオーナー・ビルダー が製作した今回のボディは非常に重量バランスが良く、タイヤモデル

・タイヤサイズ・使用エンジンは去年ドライブしていた S15 シルビアと同様のもの。それらに対するデータ量も多く、私自身、それらを扱う方法をよく知っている。そこは私にとって大きな安心につながる理由でもあった。

無事に車検も通過し、練習走行へ。マシンの素性はわかっていない状況であったが、走行1 周目からまずまずの手応え。データが十分でない足回りのセットアップを変えていくことは現状の私たちにとっては迷宮入りする可能性が高いと考え、コンピューター制御によるマシンのエンジン出力特性と、タイヤの内圧調整だけに的を絞り、予選前走行では 7 周の練習走行をこなした。エンジニアの Dustin は、各周回ごとにロガーを確認し、電動スロットル アンチラグ ブーストの調整を事細かに行い、最初は少し扱いづらかったマシンを ECU 制御のみで私が好む動きにしてみせた。私たちは予選前練習走行で十分に良い手応えを掴み、予選へ挑むこととなった。
予選走行。前述したように、今年からキックアウト制度が導入される。これは私たちにとっては初めての予選方法である。しかし、それ以上に懸念していたのは練習走行時と大きく違う路面温度である。というのも予選前練習走行は午後 3 時から行われたのに対し、予選開始は午後 9 時。路面温度の差は 10 度以上であった。もちろん、他のドライバーも同じ状況である。しかし、ニューマシンに対してデータが浅い私たちにとっては 10 度以上路面温度が下がった状況に、タイヤの内圧をどう調整するか、に非常に悩んでいた。結局、練習走行時に比べ、リアタイヤの内圧を 4psi( 約 0.3kg cm2) あげる調整を施した。

 

 

予選は昨年のシリーズランキング順となるため私は、11 番目の出走となった。午後 9 時 30 分。私の順が回ってくる。もちろん日は暮れ、設置された照明が照らすコースは練習走行時とは全く違うものに見える。スタート。 1 コーナーの振り出し位置、車速はばっちり。インクリップ 1 を抜けるとそこからは大きな勾配のアップヒル区間。そこはアウトゾーン 1 に設定されている。しかし、ここで路面のグリップ上昇を見誤り、早めの減速をしてしまう。それにより、アウトゾーン 2 は大きく外し、それをリカバリーしようと試みたが、流れを止めきれずにインクリップ 2 も外してしまう。その後のダウンヒル区間はまずまずなものの、ジャッジ席の目の前である 3 つのゾーンを取り切れなかったのは非常に痛手であり、獲得ポイントは 68pt 。練習走行時の流れは良かっただけにこの獲得ポイントは自分自身、非常に悔しいものとなった。
結果的には1 本目の獲得ポイントにより、 24 位につけ、キックアウトはされずに 24 位にて予選通過となった。路面温度の違いに対する自身のドライブとマシンのセットアップ力に反省しつつ、しっかり切り替え本戦に準備を整えた。

Round.1  2021 年 5 月 8 日
本戦日。予選日同様の天候。予選後のマシンチェックでは、パーツのなじみによる大きなアライメント変化が見られたために、再度セットアップをベースの数値に戻す。マシントラブルは一切なし。スムーズに本戦日の練習走行に挑んだ。セットアップの変更はリアタイヤの内圧調整のみ。変な冒険はせず、デビュー戦にふさわしく、ファンに良い走りを見せられるよう意識していた。 TOP32 追走トーナメント前に行われるウォームアップ走行は非常に時間が短く、 2 周程度しか走行できない。そこでは主に、スタートから進入の振り出しまでの距離調整をメインに行った。ドリフト中のトラクション性能には一切不満がなく、マシンを安定させ自分のコントロール下においたまま後追い走行ができるイメージをしっかりと掴んでいた。 TOP32 追走トーナメントはウォームアップ走行直後に行われるが、 TOP16 に関しては昨日の予選同様、夜間での開催となるため、路面温度変化によるタイヤグリップ力の上昇を見越したセットアップをウォームアップ走行中に施した。

TOP32の対戦相手はベテランドライバー、同じく日本出身の Daijiro Yoshihara 選手(SUBARU BRZ / Falken Tires) 。過去 3 年間、彼とは一度も直接対戦したことがなかった。 2011 年度の FormulaDRIFT USA のチャンピオンで、私たちが導入した GT86 の兄弟車である BRZ を操る彼。日本人対決としても、兄弟車対決としても負けることが許されない 1 戦となった。
1本目は後追い走行。無理に攻めすぎず、スタートからアウトゾーン 1 までの区間で絶対に離されないとように、と意識しスタートラインについた。スタートは成功。きっちりと相手の後ろについた状態でドリフトを開始。ところが自身が思っていた以上に Daijiro 選手の振りだしが遅れる。一緒の位置で私もドリフトを開始したが、オーバースピードと判断し、めいっぱいに角度をつけ、なんとかコース上に収める。対するDaijiro 選手は若干のオーバースピードが災いし、 1 コーナーのエスケープエリアに右リアタイヤ一輪がはみ出してしまう。それにより体制を崩し、アウトゾーン 1 では望まれたライントレースではなくなっていた。接触は避けつつも、一定の距離を保ったまま、アップヒルを通過。インクリップ 2 以降のダウンヒル区間では 1.5 台分ほどの距離が開いてしまうものの 2 台ともフィニッシュラインを通過し、入れ替え。予選時にミスが出たアウトゾーン1 からインクリップ 2 までの区間を特に気を付け走行。ミスなく、しっかりと先行の走りができたが、背後にはぴったりと Daijiro 選手が迫っていた。 1 本目の相手のミスが大きいと判定され、私に軍配。ニューカー初勝利、そして、兄弟車対決を制した。

TOP16の対戦相手はこちらもベテランドライバー、 Justin Pawlak 選手 (FORD MUSTANG / Falken Tires) 。こちらも過去 3 年間、一度も直接対戦したことがなかったドライバー。 2021 年はニューマシンと共に新しい流れが続く。 1000 馬力を出力する彼のマスタングは、横に速い。大きな角度を付けた状態でぐんぐんとマシンを進ませてゆくドライバーである。
1本目は先行走行。全体的にスムーズに走行できたものの、アウトゾーン 2 に寄りきれず、小さめのラインをトレースしてしまう。その背後をかなりの近距離で合わせてきていた Justin 選手。入れ替えて、後追い。自分の先行のミスと、相手の素晴らしい後追いのアドバンテージをひっくり返すほどの走りをしなければならない状態となった。
スタートから振り出しまではかなりいい場所にマシンを運ぶことができた。しかしその後のアップヒル区間で、少し車間距離が開いてしまう。相手より少しドリフトアングルを抑えながら捕えようとするが、アップヒル区間で開いた差は終始まで埋まらず、フィニッシュ。悔しい悔しい、 TOP16 敗退となった。
ニューマシンのデビュー戦となった今ラウンド。トラブルもあり、レース前に望んでいた良いスタートを切ることができなかったが、ニューマシンのポテンシャルは非常に高く、十分なテストが行えずしても今後の可能性を大いに見せられるラウンドとなった。次戦、 Rd.2 Orlando では更にマシンを仕上げ、より良い戦いを見せ、表彰台に登れるようしっかりとチームと共に準備を進める。

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