レポート
Round3 オールド ブリッジ タウンシップ レースウェイ、ニュージャージー
Round.3 (Thursday) 2021 年 6 月 17 日
FormulaDRIFT史上、初開催となったニュージャージ州イングリッシュタウンOldBridge Township Raceway Park 。 バンクはない平坦なトラックで、一見単調に見える 8の字形状のレイアウトは、設定されたゾーン区間と中心に通るコンクリート路面のドラッグコース跡地により、テクニカルなコースに化けた。アベレージスピードは今期の開催コースの中で一番低いもののエスケープエリアは一切なく、壁で覆われたコースはクラッシュ率も高い。会場入りする一週間前に、チーム本拠地であるジョージア州にて 2 度の車両テストを行った後、会場入りした。
木曜、練習走行日。2 時間の練習走行が 2 枠用意された。 Rd.2 のオーランドでは練習走行日に思うように後追い練習ができず、追走に向けたマシンセットアップが不十分であったため、 TOP8 のバトルでは相手との車速差を大きく感じた。この反省を生かすべく、今回のラウンドでは練習走行日の前半、早い段階で単走の組み立てを行い、すぐに追走練習を開始する予定でいた。 1 周目、初開催ということでトラックレイアウトのチェックとマシンのセットを確認するべく、コースイン。トラックの雰囲気は掴めたものの、マシンの動きが十分でない。直前のテスト走行で変更したリアサスペンションセットアップが悪さをしているのか、リアサスペンションストローク量が非常に多く、車両がバタつき、コントロールしづらい。減衰を調整しつつ、 3 周こなしたところでマシンに異変が起きる。今ラウンドから導入した長さの違うリアアームがリアメンバーにストレスを与え、加工しているリアメンバーに複数クラックが発見され、チームは修理に追われる。修理が終わるころには 1 枠目の練習走行は終了しており、組み立て通りにいかない状況となった。チームは急いで応急処置を済ませ、 2 枠目の練習走行にマシン修理を間に合わせてくれた。
2枠目の練習走行ではマシンのトラブルは改善し、 5 周目を終えた段階で単走の先行走行の組み立てを済ませ、追走の後追いの練習走行に励んだ。エスケープエリアがないトラックかつ後追いでは先行車両のタイヤスモークにより視界が失われるため、目印となる景色を見つけることで後追いでの恐怖心を減らすことができ、初日の練習では非常に良い感触を掴むことができた。
Round.3 (Friday) 2021 年 6 月 18 日
金曜、予選日。予選前に1 時間の練習走行が用意された。ここで は 1 本の単走練習、 3 本の後追い練習を行った。マシンの感触はかなり良く、予選並びに追走トーナメントに向け良い手応えを感じることのできる走行となった。今回のコースレイアウトは審査区間が非常に短い為、タイヤライフの心配は不要。運転のしやすさとピックアップの良さを考えたギア比に設定して走行することができた。 2 速でスタートを行い、 3 速で進入する。その後はシフト操作なしに 3 速で回りきるというギア比であった。天候が不安定で、予選は雨の可能性もあったが私の出走時は、日はまだ出ておりドライ路面で走行することができた。
予選はキックアウト方式。1 本目走行後、下位 8 ドライバーが 2 本目の走行に臨むというもの。 追走 トーナメントを優位に進める為には 1 本目の走行で高得点を取ることが求められる。振り出し位置とアウトゾーン 2 の距離感を意識し、走行。振り出し後のサイドブレーキ使用時間が少し長くなったものの、全体的に綺麗なライントレースをすることができ、アクセル開度も高い状態をキープできた。今ラウンドでは単走走行を最小限に抑えていたため、予選に向けた走行本数自体は少なかったが、マシンのセットに好感触を持っていた為、不安なく攻めることができた。振り出しの 調整感 が減点となり、高得点とはならなかったが 90pt を獲得し、予選は 10 位で通過。まずまずの内容となった。
Round.3 (Saturday) 2021 年 6 月 19 日
本戦日。天気予報では TOP16 開始となる夜間に雨が降る予報であった。幸いにも、今ラウンドの直前に行ったマシンテストでウェットコンディションを走行する機会があった。トーナメント開始前に設けられた 1 時間の練習走行では先行走行 1 本、後追い走行 1 本、トータル 2 周をこなした。練習走行日に新品リアアームを装着したことに
よるアライメント変化が見られたが、チームは走行の度にセットダウンを行い、私は毎周完璧な状態のマシンに乗り込むことができた。今期は新車投入シーズンであるが、エンジニアとメカニックが素晴らしい連携を行ってくれており、マシンに不安がないことが非常に大きなハンデとなっている。
TOP32の対戦相手 は GTRadialUSA チームメイト、 Dan Burkett 選手 (TOYOTA SUPRA MK4 / GTRadial USA) 。 2015 年からスープラで FormulaDRIFT シリーズ に 参戦している 彼。スープラ x2JZ エンジンといえば彼、というイメージが多くあり、ファンも多い。大パワーを発揮してい 2JZ に組み合わせるのは、私たちチームと同じ GTRadial USAChampiro SX2 295/40R18 というタイヤ。同タイヤメーカーのチーム対決となった。出走直前。天気予報を裏切り、突如として大粒の雨が降り始める。瞬く間にコースはフルウエットに変わる。もちろん初開催となるこのコースのウエット路面のマシンデータなどはなく、データロガーを参考にした 予想セット を施し、スタートラインについた。
ブースト、電動スロットル、タイヤプレッシャー、ショック減衰力を調整し、ウォームアップに臨む。急な天候変化ということで、バトル前に 1 周のチェック走行が設けられた。そこでは、ドライ同様に 2 速と 3 速を使い走行したが、きめの細かいアスファルト路面と旧ドラッグコースのコンクリート路面の組み合わせ、さらにはアウトゾーン付近は逆バンクというウエット路面には最悪のトラック。ブーストを極限まで下げていても 3 速を使用するとホイールスピードが高すぎ、コントロールがかなり困難であった。ウォームアップではハーフスピンを喫する。先行走行。とっさの判断で、 1 速 スタート、 2 速での走行に変更する。この判断が功を奏し、ホイールスピードは大幅に抑えられ、先行時はノーミスで走り切る。後追い時は、 Dan 選手が振り出し後にハーフスピン状態になり、私がインからオーバーテイク。勝負は私に軍配。 TOP16 に駒を進めた。
TOP16の対戦相手は昨年 より PRO SPEC クラスから昇格したドライバー、 Ale c Robbins 選手 (NISSAN 350Z / FEDERAL TIRE 。彼のマシンは決して大パワーマシンではないもののマシンコントロールテクニックは冴えており、更にはウエット路面では出過ぎていないパワーが彼のドライビングを後押しする。 TOP32 では GTRadialUSA チームメイトの Jeff 選手を破り、 TOP16 に駒を進めていた。私は TOP32 のバトルを経て、更にスロットルレスポンスに変更を加え、 TOP16 のバトルに挑んだ。 1 本目は先行。私の先行走行も良い内容だったが、 Alec 選手のエンジンサウンドが終始聞こえるほど近距離に詰め寄られていた。やはり相手の車速は高いか。後追いは 果敢な攻め が必須となった。スタート後、振り出しから詰め寄ることを意識し、アクセルを残したまま進入。進入 アウトゾーン 2 と終始良い位置につけた。一時、車間が近すぎ、マシンがふらつく場面もあったが終始攻めの後追いを行うことができた。結果、勝負は私に軍配。 TOP8 のバトルに駒を進めた。
TOP8の対戦相手 は 2004 年から FormulaDRIFT USA に参戦するベテランドライバー、 Chris Forsberg 選手 (NISSAN 370Z/ GTRadial USA) 。 NOS エナジードリンクからスポンサードを受ける彼は世界を舞台にドリフトのみならずレーシングもこなす。そして、 私にとっては TOP32 のバトル同様に、再び同タイヤメーカー対決となる。クリス選手とは 2020 年に一度対戦しており、負けを喫している。 今回 はリベンジをしたいところである。 1 本目は先行。不安定に降る雨はこの時、小雨になっていた。フロントウィンドウにつく雨粒は僅かで、スポッターからはコンクリート部分だけ異常にグリップレベルが上がっているという情報があった。それらを加味したうえでスタート。コンクリート部分ではタイヤスモークが出始めるほどの状況であったが、アスファルト部分は依然スケートリンクのような路面状況。フィニッシュライン手前、アウトゾーン 3 でオーバーシュートせぬようコンクリート路面で乗った車速をブレーキするが、路面を読み間違いライントレースが小さくなってしまう。入れ替えて後追い。 TOP16 の後追い以上の攻めを必要とされた。振り出し、アウトゾーンの入り口と近距離を保った。しかし、一度大きく先行の Chris 選手のマシンをプッシュしてしまう。お互いに少し挙動が乱れたが、スピンやコースアウトはなくリカバリーが可能なレベル。ウエット路面上で非常に難しいコンディションであったが、必死に攻め切りフィニッシュラインを切った。審査は、 3 人中 1 人がワンモアタイムを選択し、その 2 人は Chris 選手に勝利の切符を渡した。私の車間距離は高評価であったが、先行のミスと後追いのラインが相手より少し内側だったことが Chris 選手の勝利の理由として挙げられた。今ラウンドも残念ながら TOP8 で退くこととなったが、攻め切ることができたことと、新車初のウエットコンディションレースでもしっかりと存在感を出すことができたのは、今後のレースに対しても非常に大きな手応えとなった。