レポート
鈴鹿大会 レース1 レポート
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劇的戦略で逆転勝利
SROジャパンカップ2025第4ラウンド鈴鹿の決勝レース1は、刻一刻と変化する天候が戦略の明暗を分ける、予測不能な一戦となりました。
予選ではAKITA選手が素晴らしいスピードを見せつけながらも、不運な赤旗中断に阻まれ、タイヤのピークを逃しP3グリッドに甘んじるという、少なからず悔しさが残るスタートとなりました。
しかし、その悔しさをバネに、TEAM UPGARAGE with ACRはレースで最高の輝きを放つことになります。
◆驟雨、そして静かなる戦略戦
グリッドウォーク中には突然の激しい雨が降り注ぎ、コースは瞬く間にフルウェットコンディションに。
しかし、フォーメーションラップ開始前には雨が止むという、気まぐれな鈴鹿の空は、各チームに重い選択を突きつけました。
路面が乾き始める可能性を秘めたこの状況で、第2スティントを担当する小林選手は、スタートドライバーのAKITA選手に対し「できるだけ水が残る路面を走って、タイヤを温存してほしい」と、後の展開を見据えた冷静かつ的確なアドバイスを送りました。
AKITA選手はその言葉を胸に、手堅くオープニングラップを走り切り、大きなアクシデントを回避してレースの主導権を伺います。
◆大胆不敵な決断、ピットウィンドウ限界の「スリック戦略」
ピットウィンドウがオープンする25分から35分の間、多くのライバルチームは定石通り、ジェントルマンドライバーからプロドライバーへの交代をミニマムのタイミングで行い、ウェットコンディションが続くと見てレインタイヤを装着してコースへ復帰しました。
誰もが安全策を取る中、18号車 UPGARAGE with ACRは、異彩を放つ大胆な戦略を実行します。
それは、小林選手の「路面は必ず乾く」という強い確信、そしてAKITA選手の安定したペースへの絶対的な信頼に基づいたものでした。
18号車はピットウィンドウの限界までステイアウトを継続。
この間、早めにスリックタイヤでピットアウトした45号車の動向が、路面が着実に乾きつつあることを示唆する貴重な判断材料となります。
そして、ピットウィンドウが閉まる最終盤、まさに限界のタイミングでピットインした18号車は、驚くべきことにレインタイヤではなくスリックタイヤを装着!
この大胆なギャンブルの結果を待ちつつ、18号車はP6でコースへと復帰します。
◆小林選手の鬼神の走り
ピットアウト直後のアウトラップから2~3周は、まだ路面が完全に乾ききっておらず、レインタイヤを履く車両の方が僅かに速いというスリリングな状況。
しかし、その僅かなタイム差はすぐに逆転します。スリックタイヤのグリップが本領を発揮し始めると、小林選手が駆る18号車は、まるで別次元の速さを見せつけます。
鬼気迫るファステストラップを次々に更新し、まだウェットタイヤで粘る車両、そしてスリックに交換したもののタイミングが早すぎたライバルたちを、瞬く間にごぼう抜き。
その怒涛の追い上げは見る者を熱狂させ、残り15分を切ったところ、つまりピットアウトから10分も経過しないうちに、ついにトップの座を奪取するという劇的な逆転劇を演じました。
そこからは、2位に30秒以上もの大差をつける圧倒的なパフォーマンスで、あまりの大差に中継カメラにも映らないほどの独走態勢を築き上げ、最終ラップまでその勢いは衰えませんでした。
そして、チェッカーフラッグを受けた瞬間、ピットウォールではAKITA選手が全身で喜びを爆発させ、チーム全員が歓喜に沸きました。
フルウェットからドライへと変わりゆく極めて難しいコンディションの中で、TEAM UPGARAGE with ACRは卓越した戦略眼と、AKITA選手、小林選手それぞれの圧巻の走りが織りなす劇的な逆転勝利を掴み取りました。