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SUPERT GT

【SUZUKA 10 HOURS】レポート

2018年8月31日

トラブル発生も価値ある完走!

【予選】 晴れ/ ドライ
Q1①:2’05.411 GAP 3.076 23番手/35台中 Dr.YUHKI NAKAYAMA

Q1②:2’04.699 GAP 1.939 27番手/35台中 Dr.TAKASHI KOBAYASHI

Q1③:2’05.166 GAP 2.478 31番手/35台中 Dr.TAKUTO IGUCHI

Q1TOTAL:6’15.276 GAP 6.909 26番手/35台中

【決勝】晴れ/ドライ

1st:Mercedes-AMG Team GruppeM Racing T.Vautier/M.Engel/R.Marciello 10:00’32.584

2nd:Mercedes-AMG Team Strakka Racing L.Williamson/M.Goetz/A.Parente +31.635

3rd:Audi Sport Team Absolute Racing C.Haase/M.Winkelhock/K.van der Linde +32.901

27th:UPGARAGE 86 MC Y.NAKAYAMA/T.KOBAYASHI/T.IGUCHI +30Laps

今回が初開催となる「SUZUKA 10 HOURS」。残暑が非常に厳しい鈴鹿サーキットにて開催された。「SUZUKA 10 HOURS」は、SUPER GTのシリーズの1戦として長く親しまれてきた、「鈴鹿1000km」に変わる夏の1大イベントとして、今年産声を上げた。SUPER GTのシリーズとしてではなく、GT3で戦う世界各国の有数チームが鈴鹿へ集結し、GT3の世界一を決定するという世界規模のレースだ。

TEAM UPGARAGEは、SUPER GTシリーズでも抜群のコンビネーションを見せる、中山選手・小林選手に加え、普段はSUBARU BRZ R&D SPORTの井口選手を迎え入れSUZUKA 10 HOURSを戦う。なんと中山選手、小林選手、井口選手の3名は同い歳。長きに渡ってライバルとして戦ってきた同級生3人が1つとなって世界一を目指す。

イベントは24日の金曜日から開催となった。前夜は台風の影響でウエットコンディションとなり、夜には強い風雨が舞い公道パレードが中止になったりと影響の出た鈴鹿だったが、この日は雲が多いもののコンディションは好転。走り出しこそ路面は濡れていたがすぐに乾き、待ちに待ったドライコンディションでペイド・プラクティスがスタートした。

前回の公式テストではクラッシュの影響でドライでのテストを全く行うことができず、この日行われる3回のプラクティスは非常に貴重な時間となる。午前中のプラクティスは、開始早々にマシンにトラブルが発生し、数周しか走行ができずセッション終了となってしまった。

午後のプラクティスまでに部品の交換を行いトラブルは解消。やっとドライ路面の走行を行える状況に。小林選手で走行を開始し、セットアップを行っていくが、全くタイヤがマッチせずマシン的に得意な鈴鹿にも関わらず厳しい展開。というのも今回のSUZUKA 10 HOURSはタイヤがPIRELLIタイヤのワンメイク。普段戦うSUPER GTで使用するYOKOHAMAタイヤはマザーシャーシ向けに開発されたタイヤだが、PIRELLIタイヤはGT3向けに開発されているタイヤのため、車重の軽いマザーシャーにはあまりマッチングしないタイヤとなる。マッチしないタイヤのためセットアップも大幅に変更しながら、タイヤにグリップを出させるところを探しながら走行を重ねて行く。その後、中山選手、井口選手も走行をし、少しづつフィーリングは向上していくものの、大きくタイムにはつながらない難しい状況の中セッションは終了となった。

そして、18時半からナイトセッションのプラクティスが行われた。SUZUKA 10 HOURSは朝の10時から夜の20時までの走行のため、夜間の走行がある。そのため事前に夜間走行のプラクティスも行われる。午後のセッションからさらにセッティングを変更し、ナイトセッションのプラクティスに挑む。小林選手でスタートし、走行を重ねて行く。日中より路面温度も下がったこともあり、多少フィーリングは向上。リアの安定感を出させるセッティングを探していく。途中、130Rでクラッシュした車両があり、赤旗中断があったりしたが、順調に走行を重ねセッションは終了。少しづつではあるものの、PIRELLIタイヤの攻略は進んでおり、なんとか予選で上位進出を目指したいところ。

予選日は朝から快晴。8月最後の週末ということもあり、多くのモータースポーツファンが鈴鹿へ足を運び、大盛況となった。予選は、3名のドライバーが1人それぞれ15分ずつ走行を行い、3名の合計のタイムがQ1のタイムとなる。Q2(POLE SHOOTOUT)へは、上位20台が進出可能となり、チームの総合力がQ2進出へのカギとなる。走行は登録順で行われ、TEAM UPGARAGEは中山選手・小林選手・井口選手の順で出走する。

まずは、中山選手がQ1①をスタート。昨日のプラクティスからセッティングを変更し、リアの安定感は以前よりも増したが、逆に今度はフロントの接地感がなくなってしまい、アンダーステアが強くタイムを上げにくい状況に。しかし、中山選手は難しいマシンをうまくコントロールし、2’05.411で23番手タイムを記録。中山選手のコメントを基に再度セッティングを変更し、小林選手がQ1②をスタート。セッティング変更が功を奏し、2’04.699と自己ベストタイムをマーク。しかし、20台近くが4秒台をマークすつという大混戦で惜しくも27番手。そして、Q1③に井口選手が挑む。井口選手も乗りなれない難しいマシンをうまくドライブし、31番手で2’05.166をマーク。プラクティスからタイムもフィーリングも向上してはいるものの、タイヤがマッチしないことによる影響は大きく、得意な鈴鹿で、経験・実績共に国内トップクラスの3選手を持ってしても、Q2(POLE SHOOTOUT)は果たすことができなかった。タイヤの重要性を痛感する予選結果となった。

決勝日も前日同様に非常に暑さの厳しい1日。マザーシャーシにとっては初めての、10時間という長丁場のレースになるので、マシン各部のチェックを入念に行い、予選でのドライバーのコメントを基にセッティングも再度煮詰めて決勝へ挑んだ。

15分間のウォームアップ走行を無事に終え、午前10時に10時間耐久レースの火蓋が切って落とされた。スタートドライバーは小林選手でグリッドは26番手スタート。スタート直後にストレートでオーバーテイクを許し多少順位を下げてしまうが、特に大きな混乱もなく、小林選手は順調に周回を重ねて行く。開始から30分頃になると、車重が重くタイヤへの負荷の大きいGT3勢が軒並みペースを落とし始め、ここから小林選手のオーバーテイクショーが始まる。抜きどころの少ない鈴鹿サーキットでハイスピードのS字コーナーや逆バンクコーナーでコーナリングスピードを生かし、オーバーテイク。一時は17番手まで順位をあげ、約1時間でピットイン。

82秒の最低ピットストップ時間が定められているため、マザーシャーシ車両が得意とするタイヤ無交換作戦でピットストップでタイムを稼ぐことは難しい。ルールで1回のスティントの最大時間は65分と定められているため、ほとんどのチームは1時間を目安にピットインをする。TEAM UPGARAGEの作戦としては、毎回のピットストップでしっかり4輪タイヤ交換を行い、スティントの全体でペースを安定させ、後半GT3勢のペースが落ちてきたタイミングでオーバーテイクし、上位進出を狙う作戦。

このピットインも4輪ともタイヤを交換し、中山選手にバトンタッチして、ピットアウト。しかし、このピットインの際に作業違反があり、ドライビングスルーペナルティを課されてしまう。順位は27番手まで落としてしまった。その後、中山選手も順調に走行を重ねていたが、突如シフトダウンがしづらくなるというトラブルが発生。なんとか走行はできる状態ではあったものの、シフトダウン時にオートブリッピング(自動で回転数を合わせてくれる)ができないためシフトロックを誘発し、非常に不安定な状態でペースを上げることができない状況に。それでも順位はキープしてピットイン。今度は井口選手ドライブ。トラブルを抱えながらもうまくペースをコントロールし、順位を20番手近くまで戻し、ピットイン。

小林選手の2回目のスティント。小林選手はトラブルを抱えた状態のマシンにもかかわらず果敢にアタックをし、予選のタイムに近い5秒台前半をコンスタントに叩き出しながら走行。後半にクラッシュ車両があり赤旗掲示。少し早目のピットインを行って中山選手にチェンジ。中山選手も安定したラップを刻み約1時間のスティントを終えてピットイン。今回は、タイヤ交換・給油に加えて、オイル充填やウィンドウフィルムはがしなども行ってピットアウト。

井口選手2回目のスティントがスタート。長いレースのため、周回遅れの車両もトップ集団の車両も入り混じりペースをキープしにくい状況だったものの、さすがは井口選手で順位は17番手まで回復。このスティントも順調に周回を重ねていたが、途中クールスーツが効かなくなるというトラブルが発生。灼熱の中、井口選手は暑さに耐え残りのスティントを走りきり、ピットイン。クールスーツの修理はピット時間内での作業は難しく、小林選手はそのまま3回目のスティントをスタート。しかし、スタート直後にシフトダウンが全くできない状況に。6速に入ったままシフトチェンジができず緊急ピットイン。一度マシンはピットに入り、修復を行う。シフトダウンができない現象については、部品の破損が発見されたため、急きょ部品を手配し、交換。しかし、クールスーツは故障の原因がわからず、修復が難しいため、ルーフへエアダクトをつけて暑さ対策をする方法に変更。20分弱で作業を終え、小林選手が再度ピットアウト。

シフトダウンの症状は解消され、小林選手はまたハイペースで走行をしていく。しかし、スティント中盤にまたもトラブルが発生。今度は、突然のガス欠症状。搭載燃料には余力があったが、なんらかの原因で燃料が送られずまた、緊急ピットイン。燃料を満タンにして、中山選手にバトンタッチ。走行を重ねるが、10周を過ぎたあたりで再度、ガス欠症状が発生。スロー走行となってしまい、なんとかピットイン。再度燃料を満タンにし、スタートするものの。10周前後で ガス欠症状が発生するという苦しい展開。短いスティントでピットインしながら、なんとか走行をしていたが、レース残り1時間を過ぎた段階で燃料満タンから6周しか走れない状況になってしまう。

苦渋の決断でレース終了残り10分までピットで待機し、無事にチェッカーを受ける作戦をとることに。ピット内で燃料トラブルの原因を探るがやはり原因はわからず、残り10分を迎え小林選手が最後のピットアウト。残り10分を無事に走り切り、見事長い長い10時間のレースのチェッカーを受ける。トラブルが度重なったレースとなったが、ドライバー・メカニックとも最後まで諦めることなくゴールを目指し、悔しいながらも感動のチェッカーとなった。

チームとしても、マシンとしても初めてとなる10時間耐久レース。万全の対策をし、臨んだもののドラブルが発生し、得意な鈴鹿で悔しい結果となった。

しかし、トラブルはあれど完走できたことは非常に得られるものが多く、今後につながる貴重なレースとなった。また、10時間という長時間のレースでチームの団結力はさらにアップしており、強いチームになってきている。SUPER GTも残り3戦。シリーズチャンピオンに向け、マシンのアップデート等全力で挑んでいきます。

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